「NSXとの一番の思い出は2020年にチャンピオンを獲れたことです」そう語るのは、ホンダ陣営の陣頭指揮を執る佐伯昌浩GT500ラージプロジェクトリーダーだ。
ホンダ陣営は2014年からNSX(当初はNSX CONCEPT-GT)でGT500を戦ってきた。しかし、ベース車両の最終限定車『NSXタイプS』の生産終了にともない、NSX-GTによる活動も終了。今季2024年からはシビック・タイプR-GTに車両をスイッチすることをすでにアナウンスしている。
NSXはじつに10年間にわたってGT500を戦い続けてきたわけだが、その間で「もっとも記憶に残っているのが2020年だった」と佐伯氏はいう。
「私は2017年からここ(GTプロジェクトリーダー)にいるので、もちろん2018年のタイトル獲得は嬉しかった。ただ、その時は『ミッドシップだから獲れたんじゃないの?』という言葉を耳にすることもありました。これに対して2020年の車両は他社と同じFRレイアウトでしたからね」.
佐伯氏が「2020年を一番」としたのは、他社と同じ条件だったことが大きい。しかし、よく話を聞いてみると、どうやらそれ以上の理由があることが判明した。それが、「社内でも極秘だった」“比較車”の存在だ。
ホンダ陣営がFRレイアウトのNSX-GTを投入したのは2020年。しかし、実際にはそれより2年も前に超!極秘案件としてFRのNSX-GTが存在していたのだ。
ホンダ陣営のGT500活動は2014~2016年がNSX CONCEPT-GTで、そのうちの最初の2年はハイブリッドを積んでいた。当時は、ミッドシップハンデに加えて、ハイブリッドシステム(HEV)ハンデを積んでの戦いだった。その後、HEVこそ降ろしたものの、2019年末までは、依然としてミッドシップハンデを積んでの参戦だった。
このころの開発陣は「自分たちに課せられているミッドシップハンデが、本当に妥当なものなのか」と疑心暗鬼になりながら開発を進めていたという。しかし、ある時期を境に「他社のFR車両に対して、ミッドシップ車両はどこが有利で、どこが劣っているのか?」を愚直に研究しはじめた。そうした流れで行き着いた先が、これまでいっさい公にされてこなかった謎の研究車両へとつながる。.
当初は敵の強さと弱点を知ることが主な目的だったはずの研究は、結果的に比較車両を走らせるまでに至ったのだ。
この極秘研究車両の開発に従事していたエンジニアたちは、当時のことを「とにかくつらかった」「人生で、あれほど大変だった時期はない」と吐露する。ところが、そう語るときの彼らの表情は、ひとりの例外もなく満面の笑みにあふれていることに気づく。
「当時、みんなには本当につらい思いをさせてしまったけど、いまから思えばいい経験になったはず」と佐伯氏自身も回想する。.
2014年からFRレイアウトを採用していれば、これら一連の作業は間違いなく不要であり、もっと早い段階で戦闘力の高い車両を作り上げ、最短距離で最高の結果を得られたはずだ。
しかし、遠回りしたぶん、知識や技術の幅が増したことも揺るぎない事実。NSX-GTの開発陣は紆余曲折、試行錯誤を経験してきたからこそ、FRレイアウト投入初年度(2020年)に、いきなりGT500タイトルを獲得できたといっても過言ではない。
.では、この極秘研究車両に関する詳細が掲載されている。.
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10年間にわたった『NSX-GT』挑戦ストーリー。思い出深い2020年の戴冠、極秘だった比較車の存在
Discussion in 'News and Articles' started by Auto News, Jan 29, 2024.
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