F1技術解説レビュー レッドブル:2019年からの規約変更で苦戦もオーストリアGPのアップデートで覚醒

Discussion in 'News and Articles' started by Auto News, Jan 13, 2020.

By Auto News on Jan 13, 2020 at 9:22 PM
  1. Auto News

    Auto News Moderator Staff Member

     レッドブル・ホンダの初年度は、新たなパートナーであるホンダの戦闘力が当初は疑問視された。ところが弱さをさらけ出したのはむしろ、レッドブルRB15の車体だった。しかし第9戦オーストリアGPを境に、その後のレッドブルとホンダは着実に結果を出し続けた。

    ■ニューウィは、新規約への適応が苦手?.

     2011年来、エイドリアン・ニューウィの手によるマシンは、後方に向かって車高が上がって行く、『高いレーキ角』が特徴だ。ディフューザーのボリュームを上げることで負圧が増大し、より多くのダウンフォースが発生する。さらにリヤサスペンションがしっかり機能していれば、ストレートの全開走行の際にはリヤが沈むことでフロアは水平に近い位置になり、ドラッグは軽減される。.

     ただし、欠点も大きい。一番の問題は、前後輪が巻き起こす乱流がフロア下に侵入しやすいことだ(青矢印参照)。その結果、フロア下のベンチューリ効果が大きな影響を受け、ディフューザーが期待した性能を発揮してくれなくなる。そのためエンジニアたちはフロア脇に複雑な切り欠きやデフレクターを取り付けるなど、いくつもの工夫を凝らしてきた。

     マシン前部に関して言えば、前輪が起こす乱流をフロントウイングによって両脇に飛ばす、いわゆる『アウトウォッシュ』が2018年までは効果的だった。

    ■レッドブルに特に不利だった規約変更.

     しかし2019年の技術レギュレーションは、その乱流が追い抜きを厳しくするとして、大幅に制限した。独特なレーキマシンで強大なダウンフォースを発生していたレッドブルマシンにとって、アウトウォッシュは欠くことのできない武器だった。なのでその大幅な制限は、ライバルチームよりはるかに大きなダメージを、レッドブルに与えたのである。

     クリスチャン・ホーナー代表は、低迷を続けたシーズン前半をこう述懐している。「マシン挙動は極端にピーキーになり、運転だけでなくセッティングも非常に難しくなってしまった。何が起きていて、それにどう対処すべきか理解するのに、われわれは非常に時間がかかってしまった。それがようやくできたのが、(シーズン初優勝を遂げた)オーストリアGPだったということだ」

     レッドブルのフロントウイングはメルセデスと同様の、外側に向かって上がって行く形状である。ダウンフォースを稼ぐのに効果的だが、アウトウォッシュには向いていない。それでもフロアがほぼ水平で、ホイールベースの長いメルセデスW10は、そこまで厳密なアウトウォッシュを必要としない。シーズン前半の両者のパフォーマンス差には、そのことも大きく影響していたといえるだろう。

    ■モナコ、そしてフランスでのアップデート.

     そのハンデキャップ克服の最初の大きなステップが、第6戦モナコGPでのアップデートだった。フロア両脇に付けられた4つの小さなデフレクターが、フロア下部への乱流を防ぐ役割を効果的に果たした。1970年代に一世を風靡したグランドエフェクトカーの、サイドスカートと同じ原理と思ってもらえばいいだろう。

     しかしそれだけでは、メルセデスとフェラーリの追撃には十分ではなかった。前輪の乱流のできるだけ解消するための次の工夫が、新形状のフロントホイールだった。アウトウォッシュ効果を狙った中空のハブは昨年から禁止されたが、レッドブルの空力エンジニアたちは規約ぎりぎりまで攻めて、各スポークを極限まで細く、さらに中心部に向かって大きな空間が開けたのだ。.

    ■オーストリアでの覚醒.

     そして次の第9戦オーストリアGPで、レッドブル・ホンダはついに初優勝を遂げる。ここでも新たな空力アップデートとして、フロントウイングにいくつかの形状変更を行った。外見からは大きな変更とは思えなかったが、『フロントとリヤのバランスが格段に改善された』と、マックス・フェルスタッペンは手放しで評価した。具体的にはリヤが安定したことで、コーナー進入からクリップに向けて高い速度を維持できるようになったのである。

    ■賭けに勝ったレッドブル・ホンダ
     その後もほぼ毎戦優勝争いに絡むようになったレッドブル・ホンダだったが、夏休み以降はその勢いを失ってしまう。第13戦ベルギーGP、第15戦シンガポールGP、第17戦日本GP、第20戦ブラジルGPと、アップデートの手が休まることはなかったが、その効果は限定的に見えた。.

     数字の上でも最終戦までの9戦でレッドブルRB15は、最速マシンに比べて平均0.483%遅い。1周80秒のコースと仮定すると、約0.4秒の遅れとなる。獲得ポイントで夏休み前のオーストリアから第12戦ハンガリーGPまでは、平均20.33だったのが、ベルギーGP以降は19.22まで落ちている。ただしこれはスタート直後の度重なる接触事故など、車体性能とは直接関係ない要因が大きかった。

     レッドブルは多くのシーズンで、開幕序盤は相対的な戦闘力でライバルに負けている。それが中盤以降盛り返し、最後には最強かそれにほぼ近いレベルのマシンに仕上げる。そんな独特のパターンを、2019年も踏襲したといえるだろう。そこにはトロロッソ同様、ホンダ製パワーユニットの貢献も大きかった。飛躍的に向上した信頼性の下、ホンダPUはどんどんパワーアップして行った。

     しかし類似した空力コンセプトであるメルセデスとのパフォーマンス比較を見ると、メルセデスが苦手なサーキットでも被害を最小限に食い止めているのに対し、レッドブルはパフォーマンスの落ち込みが大きいことがわかる。2020年に本気でタイトル獲得を目指すのなら、シーズンを通して安定したパフォーマンスを発揮することが、何よりも重要だろう。

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